多感な時期の女子生徒と間近で関わり、その成長に携われる女子校教員は非常にやりがいのある仕事。しかし、女子校特有の難しさがあるのも事実。長く勤務しているうちに「女子校の先生を辞めたい……」と考えることもあるのではないでしょうか?
そこで私立の女子校で14年間教員を続け、最終的に学年主任を務めたあと、フリーランスのライターに転職した筆者が「女子校特有の難しさ」や「女子校教員を辞めたいと思ったとき、まず何をするべきか」について実体験をもとに整理しました。
女子校に勤務していて「転職したいな」「辞めたいけれど、何をすればいいんだろう」と考えている方は、ぜひお読みください。
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私が女子校教員を辞めたいと思った5つの理由
はじめに、私が女子校教員を辞めたいと思うようになった理由は5つあります。私が勤務していたのは1校だけですが、他の女子校に勤務していた友人からも同様のエピソードを聞くことが多かったので、「女子校あるある」だと思います。
①女子校特有の規則が厳しすぎる
1つ目の理由は「規則が厳しすぎる」ことです。
学校にもよりますが、私立の女子校では多くの場合「校則が厳しい」という特徴があります。たとえば、私の勤務していた学校は繁華街の近くにあったのですが、次のような規則がありました。
- スカート丈は膝が隠れる長さにすること
- 髪の毛は染めてはいけない
- 髪の毛が肩に触れる場合は黒か茶色のゴムでまとめること
- お化粧やアクセサリーは禁止
- 学校帰りに書店などへ寄り道する場合は生徒手帳に保護者と教員のサインをもらうこと
年頃の女の子が集まっているので、規則を厳しくすることで生徒を守るという側面があることは大人として理解できます。しかし、それを10代の少女に理解させるのは非常に大変です。
「露出度が高いと、痴漢などに合うケースが多い」「見た目が華やかすぎると、危険なアルバイトに勧誘されることがある」など、丁寧に説明しても、やはり生徒は不満そうにします。理屈ではわかっていても、心が追いつかないのです。
同じ女性として「年頃なんだからおしゃれしたい!」という少女の気持ちを「ダメ!」と突っぱねることは精神的に厳しいものがありました。
さらに、放課後に繁華街などを見回りし、寄り道している生徒を注意する仕事もありました。
勤務時間内にするべき仕事が増えて物理的に大変だったのに加え、必要だとはわかっていても、毎回「先生、うざったいな」という目で見られるのは悲しいものがありました。
②女子生徒同士の人間関係が複雑すぎる
2つ目の理由は「生徒同士の人間関係が複雑すぎる」ことです。
女子校の場合、生徒は思春期の少女ばかりです。多感な時期なので、生徒同士の人間関係トラブルは毎日のように発生していました。
私の勤めていた女子校では、相手に暴力をふるうようなトラブルはほぼありませんでしたが、
- 「気に入らない相手をグループからのけものにする」
- 「裏でクラスメートの陰口を言う」
- 「部活動で先輩が後輩に嫌がらせをする」
というようなものは度々発生していました。
トラブルが起こる度に生徒それぞれから話を聞き、禍根を残さないよう仲裁をするわけですが、それがほぼ毎日となると教員側もさすがに疲れます。
さらに、スマートフォンでのSNS利用が本格的に普及してからは
- 「友だちがLINEを既読無視する!私のことを嫌いなのかな?」
- 「〇〇ちゃんがSNSの裏アカウントを作ったらしいのだけど、私だけグループに入れてくれない。私の悪口を言っているのかな?」
というような相談も増えました。
学校にいる間はスマートフォンの利用が禁止されていましたが、放課後・家などでスマートフォンを使った生徒同士のやり取りは活発に行われています。
目に見えない範囲のことにまで注意を向けるのは難しく、苦労しました。
③モンスターペアレントが多い
3つ目の理由は「モンスターペアレントが多い」ことです。
女子校の場合、通っているのが女の子ということもあり、学校生活を不安に思ってる保護者の方が非常に多いです。
娘を思う気持ちはよくわかりますが、心配のあまり、対応の難しい要求をしてくる方も多々いらっしゃいます。
たとえば、
- 「娘は〇〇ちゃんと仲が良い。ずっと同じクラスにしてもらえないか?」
- 「娘は1番後ろの席が良いと言っている。特別にずっと後ろの席にしてもらえないか?」
- 「クラスの〇〇ちゃんのお宅は母子家庭だと聞いた。両親が揃っていない家庭の子にうちの子を近づけたくない。席を離してくれないか?」
といった激しい差別を含んだものまでありました。
ざっくばらんな申し出があるということは、それだけ教員が信頼されていることでもありますので、嬉しい半面、「こちらとしてもどうしていいかわからない」ということも多く、非常に大変だったのを覚えています。
「パートナーとの関係が上手くいかない」「娘との仲がギクシャクしている」といった家庭内のご相談をされることもよくありました。
④女性教員に対応を任される問題が多い
4つ目の理由は「女性教員に対応を任される問題が多い」ことです。
これは、「女子校で働く女性教員」特有の問題になります。
女子校の生徒は全員少女。女性特有の問題が起こった場合、男性教員に相談できない生徒が多く、結果的にすべて女性教員に対応が回ってくるのです。
たとえば「生理痛が酷くて椅子に座っていられない」というようなものから、「昨日彼氏とセックスをしてしまった。子どもができたらどうしよう」という際どい相談までありました。
女子校には男性教員もいますが、結果的にこのような問題のほとんどが女性教員に任されることになります。
男性教員が多い学年になった場合、何クラスも1人で対応することになり非常に大変でした。
最高、3~4クラス分の生徒の「女性特有の問題」を担当したことがあります。
同じ女性として、生徒が相談してくれるのはとても嬉しいことですが、やはりそれだけ仕事が増えるので大変でした。
⑤身に着く対応方法が偏る
最後の理由は「身に着く対応方法が偏る」ことです。
女子校の場合、女子生徒の対応は細かい部分まで身に着きますが、男子生徒はまったく対応することができません。そのため、「教員歴は長いけれど男子生徒の対応に自信がない」という問題が起こります。
また、「女子生徒と男子生徒が混ざった場合の問題」などのケースの対応方法も覚えられません。
勤務年数が長くなるにつれ、「ずっと同じ学校に勤めるなら良いけれど、違う学校に勤務したい場合に困る」という焦りが強くなりました。
女子校の教員を辞めたいときにすべき3つのこと
では「もう女子校の教員はキツい! 辞めたい!」と考えたとき、実際にどんな行動をとれば良いのでしょうか? ここでは私が実際に考えたことや行動したことをもとに、女子校の教員を辞めたいときにすべき3つのことを紹介します。
①「キツいのは何か」をはっきりさせる
最も大切なのは自分が「キツい」と感じていることの中身をはっきりさせることです。
- 「女性の教育に携われるのは楽しい。でも厳しい校則指導はしたくない」
- 「教員という仕事自体にはやりがいを感じている。でも年頃の女の子の相手をすることに疲れてしまった」
- 「そもそも教員という仕事が嫌」
辞めたい理由によって、転職・転校・非常勤講師になるなど、とるべき選択肢が変わってきます。「キツい!」と思っているときは、すべてが嫌になって疲れているケースが多いですが、今後のためにもこの点はしっかり見極めましょう。
「女性の教育には携わりたいけれど厳しい校則指導はしたくない」場合は、「校則の自由な女子校に職場を変える」という方向で転職活動をする必要があります。「年頃の女の子の相手をしたくない」という場合は男子校や共学校を新たな転職先として考えれば良いでしょう。学習塾の講師という選択肢もあるかもしれません。
「教員が嫌」というケースでは、自分に合った職種から改めて考えなくてはいけません。
私は「教員自体を辞めよう」と考えたので、転職先として学校は考えませんでした。
できれば信頼できる友人や同僚に相談し、「自分が困っていること」をきちんと整理しましょう。
さらに転職サイトや転職エージェントを利用すると今のライフスタイルに合う仕事を見つけられます。
②副業にチャレンジする
学校側に「副業禁止」の規定がなければ、思いきって休日などに副業をしてみましょう。教員と同じ「教える」という職種であれば家庭教師や個別指導塾の講師などがありますし、在宅業務であれば、webデザイナーやライターなどの仕事も良いでしょう。
教員の場合、学校以外の世界が見えにくいため、長く勤めれば勤めるほど、「他の働き方」がイメージできなくなります。体力的には大変ですが、副業することで外の世界が見えるようになり、新しい働き方も思い描きやすくなります。
私は副業としてライターの仕事を長く続けていました。ライターとして他の方に取材する機会も多く、「世の中にはこんなにたくさんの働き方があるんだ」と知ることができました。この経験は、教員を辞める際にもとても参考になりました。
③学校以外に人脈を作る
副業が難しい場合は、趣味やボランティア活動、習い事などを通じて、可能な限り学校以外の人脈を作るようにしましょう。「自分にあった仕事」を考える上で、たくさんの人から話を聞くことは大切です。
職場以外に知り合いを多く作ることで外の世界の話を聞くことができるため、転職先を考える上でも大いに役立ちますよ。
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女子校の教員を辞めたいなら自分の考えを整理し、世界を広げよう
女子校教員を辞めたいと思う理由や女子校教員を辞めたいと感じたらやるべきことをまとめました。
女子校教員は教員の中でもかなり特殊な環境に置かれています。長く勤めていると、「自分の今いる学校での常識」と「世間的な常識」がかけ離れてしまうことも多く、そのせいで疲弊しがちです。
そのため、「辞めたい」と思ったら、自分の心の中を整理し、世界を広げることから始めましょう。
多くの方と関わることで、今自分が置かれている状況をフラットな目線で整理できるようになりますよ。
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