この記事では「2024年最新の教員の離職率」について文部科学省の統計データを元に算出・解説しています。
結論、教員の離職率は約1.8%と計算できました。
本文では、文科省の詳しい統計データや計算方法だけでなく、教員の離職率が低い理由や離職率が低くても転職できる方法も解説しています。
転職を考えている先生はぜひ最後までお読みください。
教員の離職率は約1.8%
教員の離職率を文部科学省の統計データを元に計算していきます。
教員の離職率を計算してみたら約1.8%だった
そもそもですが、離職率とは下記のように定義されます。
離職率とは「一定期間を定め、その期間内にどれだけの社員が離職したか?」を示した率。その“一定期間”にも規定はなく、企業によってさまざまな基準で計算されています。
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一例をあげると「起算日(年度初め)から1年間の離職者数÷起算日における在籍者数×100」で算出できるようです。
したがって、教員の離職率を「教員の離職率=1年間に離職した教員数÷在職教員数×100」で計算してみました。
厳密に行うなら同年にしなければならないのですが、それぞれ公式統計が確認できた直近の数値で計算しています。
【計算式】1年間に定年前に離職した教員数(12,017人※2018年の数値)÷小中高校の在職教員数(667,161人※2020年の数値)×100=約1.8%です。
結果、教員の離職率は約1.8%となりました!
むちゃくちゃ少ない!
算出方法を下記に示します。
①教員の離職率を文部科学省「学校教員統計調査」を元に算出していきます。
まず、「2018年度に離職した教員数」と「定年を迎えずに離職した割合」から、「定年前に離職した教員数」を割り出しました。
校種 | 2018年度に離職した教員数 | 定年を迎えずに離職した割合 | 定年前に離職した人数 |
---|---|---|---|
小学校 | 16,617人 | 38.4%(4.4ポイント増) | 6,381人 |
中学校 | 9,059人 | 40.5%(0.7ポイント減) | 3,669人 |
高校 | 5,246人 | 37.5%(4.3ポイント増) | 1,967人 |
総計 | 30,922人 | 38.8% | 12,017人 |
②次に、文部科学省のデータから小中高の教員数は667,161人(2020年度)とわかります。
③計算式に当てはめて算出
1年間に定年前に離職した教員数(12,017人※2018年の数値)÷小中高校の在職教員数(667,161人※2020年の数値)×100=教員の離職率:約1.8%
離職理由別、離職教員数の推移
公立小中学校において離職理由別、定年前に離職した教員数(定年退職や勧奨退職は除く)は下記の通りです。
表にありませんが、高校教員の離職者は2015年度までは約5000人で、2018年度は 5,602人です。
離職者の総計はそれほど大きく変動していませんが、緩やかな増加傾向にあります。直近の2015年と2018年を比較すると明らかに増えています。
また、離職する場合には定年前に離職する割合がいずれも4割近くに上ります。
ちなみに、もっとも多い離職理由は精神疾患。こちらも統計開始の2009年度から増加傾向です。
教員1年目(新任教員)の離職率は約1.2%
文部科学省「学校教員統計調査」によると、2018年度に初任(教員1年目)に依願退職した教諭(公立小中学校、特別支援学校)は431人でした。
2018年度の採用者数は35,057人なので、初任教員の離職者431人÷採用者35,057人×100=離職率約1.2%
初任教員の離職率は1.2%という結果になりました。
しかし、全国の依願退職者は2018年までの3年で連続して増加しています。
1年以内に辞める先生はたった1.2%…。でも新任の頃が一番大変なので辞めたくなる気持ちがすごくよくわかります。>>教員辞めたい初任の方へ!退職した元教師からのメッセージ
ちなみに離職した理由で最も多かったのが自己都合299人、次いで病気111人(そのうち104人が精神疾患)です。
教員の離職率が低い4つの理由
教員の離職率が低い理由は下記4つです。
教員の離職率が低い理由
- 教員(公務員)の安定性の高さ
- 教員は民間と比べて年収が高め
- 教員以外の仕事を知らない(就活をしたことがない)
- 転職活動をする時間がない
それぞれ解説していきます。
①教員(公務員)の安定性の高さ
教員の離職率が低い理由の1つ目は、教員(公務員)の安定性の高さです。
教員の多くは公立学校の先生(地方公務員)です。
福利厚生や育休の制度、退職金制度の充実に加えて、よほどのことがない限り仕事を失うことはありません。
教育や学校制度は少子化とは言えどもなくならない仕事なので、一度教員(公務員)になれば、自ら辞めない限り一生続けることが可能です。
このように、公務員の安定性の高さは離職率の低さにつながっています。
②教員は民間と比べて年収が高め
教員の離職率が低い理由の2つ目は、教員の年収の高さです。
平均年収は教員670万円・民間は540万円で、教員の方が130万円ほど高くなりました。
教員の年収と民間企業の年収を比較しましたが、教員の方が月収や賞与(ボーナス)、年収、退職金の金額などかなり恵まれていました。
ただし、教員はそもそも残業代が出ない(もともとの月給に組み込まれている)ですし、休日の部活動手当も低いので「もらいすぎ」ではないと思います。
>>教員と民間どっちが大変?経験者が違いを比較
③教員以外の仕事をよく知らない(就活をしたことがない)
教員の離職率が低い理由の3つ目は、教員以外の仕事を知らない(教師になりたかったので就活をしたことがない)ことです。
大多数の教員の方は大学生のときに本格的な就活をしたことがありません。
教員一筋に頑張ってきたので、今までに業界研究・企業研究をしたいことがなく、教員以外の仕事を知らない方が多いです。
したがって、どんな仕事に就きたいか、自分の適性は何なのかを突き詰めて考えることが難しいのです。
④転職活動をする時間がない
教員の離職率が低い理由の4つ目は、転職活動をする時間がとれないことです。
ご存じの通り教員は業務量が多く、部活で土日も関係なく働いています。
定時で帰宅できるのはまれですし、そもそも毎日疲れています。ゆっくり自己分析をしたり、業界・企業について調べたりする余裕はありません。
教員の離職率は低いけれど転職できないわけでない
教教員の離職率を算出したところ、約1.8%と低い結果となりました。
しかし、離職率の低さは「教員は(能力的に)転職できない」ということでなく、転職活動の方法や教員以外の転職先を知らないことが主な理由です。
教員から転職したい方は、まずは教員の転職活動のやり方や転職先を知ることから始めてみましょう。
下記に、年代別に教員の転職事情や成功のコツをまとめましたのでぜひご覧ください。
- 年代別の教員の転職事情は>>教員は潰しが効かないって本当?転職が難しい理由と対策
- 教員から民間への転職活動の方法は>>教員から民間企業に転職する方法
- 教員からの転職体験談は>元教員の転職体験談まとめ
コメント
コメント一覧 (6件)
小学校教員の介護について調べております。34年間東京都小学校教員、現在、日本教育学会員、立教大学社会福祉研究所研究会会員です。
・離職理由「家庭の事情」の理由を把握されている範囲で教えてください。
知りたいことは、介護を理由に挙げる割合です
※来年1月に研究会でレポート発表を予定しております。お分かりになっている範囲で結構ですので教えてください。
はじめまして。
【公立小中学校において離職理由別、定年前に離職した教員数】の箇所で参照している妹尾昌俊さんの記事を確認しましたが、妹尾さんが文科省にも確認したところ、「こうした項目より細かいものは把握していない」とのことです。
ふと思ったのですが、教員の総数101万人は平成17年のデータですか。
離職の人数は2018年のデータですか。
平成17年は、2005年。
2005年のデータと2018年のデータを混ぜるのはおかしくないですか。
確かにリンク先が平成17年度になってますね。新しい資料も出てきているので確認して算出し直します。ご指摘ありがとうございます。
ありがとうございます。ただ、引っかかります。
算出し直すということは、算出する前に、データとして2005年と2018年を混ぜて計算するのはおかしいと思わなかったのですか?一般的に同じ年度のデータを扱わないといけないのはわかっていたはずですが。
おっしゃる通りです。
不確かではありますが、今回は教員総数の参照元の(当方の)リンクミスかもしれません(平成17年度の幼小中高教員総数−幼稚園教諭数を再計算してみましたが、リライト前の数値にならなかったため)。
執筆当時の参照元が現在わかりませんので、2020年度のデータで計算し直しました。ご指摘ありがとうございます。